中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2415回
経済のわからない総統は国民の災難です

2000年に中華民国の総統に初当選した陳水扁から
私に来てもらいたいと連絡があったので、
台湾に帰った時に総統府
(後藤新平が総務長官だった時代に建てた旧台湾総督府の建物)
まで陳水扁を訪ねて行きました。

一緒に中華ソバをすすったり、
向うが用意したカメラにもおさまりましたが、
きかれたときのために
総統としてやってもらいたいことを16条にまとめて、
紙に書いて渡しました。
私の主旨は
「経済政策に力を入れ、
 政治的な発言はなるべく少なくすること」
「できれば経済のわかる専門家を行政院長(総理)に据え、
 国民党がやってきた事業はそのまま継続すること」
(たとえば原子力発電は中断すると大へんなお金がかかるので、
党としては反対でも中断することは控え、
万一、悪い結果が出たら、国民党のせいにすればよい)
と言ったことで、
なかでも大陸との三通政策は
すぐにも実行することをすすめました。

向うはまだ就任したばかりのせいもあって、
「キャセイ航空にでもとんでもらうか」
と気軽に言うから、
「どちらもちゃんとした飛行機があるのに、
 どうして第三国の飛行機にする必要があるんですか」
と私は反駁しましたが、
あれから6年たつのに、
一番肝心なことが一番後回わしになっています。
弁護士あがりの陳水扁は
リクツをこねまわすのにはたけていますが、経済にはうとく、
何が台湾のためになり、何が台湾には不利になるか、
即座には頭の中に浮かんで来ないようです。

とりわけ力が入っているのは選挙運動で、
「総統になってもまだ選挙運動をやっている」
と新聞記者たちからからかわれていましたが、
小学校の卒業式にまで出かけて行くのです。
それに対して公定歩合や土地税制に対しては
担当者たちに任せっきりですから、
私はあともう1回だけ出かけて行きましたが、
だんだん面倒臭くなって
もう頼まれても行かないようになってしまいました。
向うも私にまた声をかける必要もない
ベテランになったのでしょうけれど。


←前回記事へ

2006年10月20日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ