中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2315回
人材派遣はブルーカラーにも及んでいます

人材派遣は同じ国内でも
だんだん重要なビジネスになってきました。
成長経済下の日本では
ずっと完全雇用に近い状態が続いたので
企業は人手不足に悩み、
終身雇用制と年功序列給で
従業員の忠誠心をつなぎとめてきましたが、
バブルがはじけて企業が
人件費の重荷にあえぐようになると、
社員として労働者の昇給や退職金で悩むよりも、
人材派遣会社から必要な人間に来てもらう道を
選ぶようになりました。

はじめはホワイト・カラーの採用からスタートしましたが、
自社社員より派遣費用をプラスするだけですみますから、
毎年、賃上げについて厄介な交渉をしないですみますし、
退職金の心配をしなくてすみます。
うわ載せされた賃金に支払った時点で
経費としておちますから、
ややこしい税務対策をする必要もなくなります。

その一方で、働く側も働きたい時に働いて、
仕事にあきたり、貯まったお金を持って
どこか海外にでも旅行に行きたくなったら、
契約あけに勤めをやめて自由の身になれます。
そういう仕事のやり方を選ぶ若者がだんだんふえたので、
オフィスの受付やお茶くみに派遣社員を使う企業がふえました。
そのうちに工場で働くブルー・カラーにも
同じ制度が受け入れられるようになりました。

単純労働ならともかく、
技術と訓練を要する工場で
人材派遣は無理だろうと考えられていましたが、
自動車会社や事務機器やITの企業でも、
会社を定年でやめた工場長や
重要スタッフを人材派遣会社が採用して、
プロの集団をワンセットで派遣するようになったので、
日本の一流会社が率先し
て派遣工員を採用するようになって、
雇用関係に一大異変が起ってしまったのです。
失業がある一方で、
人材派遣がふえましたが、
派遣される方も仕事選びをやりますので、
きたない、きけん、きついの3K仕事に応募する人が
いなくなってしまったのです。
これこそ成熟社会の
新しい社会現象の一つと言ってよいでしょう。


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