中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2277回
鶏のスープと白切鶏は重複しません

私の家だっていつもフカのヒレのスープというわけにはいきません。
またフカのヒレは毎日、食べるものでもありません。
フカのヒレもツバメの巣も、またナマコを干した物も、
中華料理の最高級の素材ですが、
不思議なことにそれ自身に旨味はありません。
味つけは鶏か骨付きの豚か、あるいは牛肉を使います。
それならいっそ同じダシで
おいしいスープをつくる手がある筈です。

邱家のスープには自慢のできるものがほかに4つあります。
1つは邱家鶏湯(邱家の鶏のスープ)、
2つ目は洋葱排骨湯(邱家のオニオンスープ)、
3つ目は玉燕窩(ツバメの巣と油条のスープ)
そして、4つ目が西洋菜湯(クレソンとピータンのスープ)です。

邱家の鶏のスープ

鶏のスープはそんなに珍しいものではありませんが、
一口飲んで見て下さい。
鶏肉一切れも見えないただのコンソメでこんなに味のいいものは
フランス料理でも見かけたことはありません。
一人前22元ですから(1元15円として)僅か330円です。
どうしてこのスープができたかというと、
いま日本でも有名になっている
小龍包の鼎泰豊という店があります。
この店の台北本店の鶏のスープは
鶏肉をかなり大き目に切って
生姜と一緒に小さな壷の中に入れて
長い時間をかけて蒸したものです。
大へん評判のいいスープですが、
「これより上品でおいしいスープができないかな」
とうちの家内に注文をしてつくったものです。
ダシに使った鶏肉を出さないのは、
ダシをとった鶏肉よりも、
もっとずっと歯ごたえのよい我が家の白切鶏
(鶏肉を味つけしないで、白いまま蒸したもの)を
葱と生姜と塩味で娯しんでもらいたいからです。

白切鶏

白切鶏はいまや陶朱公館の名物料理の一つになっていますが、
鶏そのものの味で勝負をしているところがうけています。
鶏のスープの方はスープだけですから、
うま味だけが売り物で、鶏肉と重複する心配はありません。
でもバラエティに神経質な人は
鶏のスープの代わりにオニオン・スープを注文する手もあります。


←前回記事へ 2006年6月4日(日) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ