中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2193回
一番大切なことは海外進出の後押しです

アジアの他の国々から見ると、
日本は金持ちの国であり、また技術先進国です。
日本に期待するものがあるとすれば、
お金の援助をしてくれるか、産業界に投資してくれるか、
それとも技術を提供してくれて、雇用をふやし、
所得の向上に力を貸してくれることです。

かつて企業進出は
帝国主義の再来と誤解されたことがありました。
ジャカルタに行った田中首相が
デモに進路を阻まれて
ホテルにとじこめられたことがありますが、
その頃はお金を持ってくることと
武器を持って進軍することを
ごっちゃに考えていたのです。
ところが、その頃お金を持ってくることは
その土地に新しい雇用をもたらし、
付加価値をつくり出すことであることがわかって、
どこの低開発国でも海外からの企業進出を
歓迎するようになりました。
税金を負けたり、
生産設備の輸入税を免除したりするようになったのは
そのあらわれです。

日本がそういう福の神の能力を持った国と見なされることは
日本にとってプラスにこそなれ、
マイナスになることではありません。
事実、日本にはそれだけの能力があります。
またそうした能力を発揮することは、
相手国だけでなく日本にとっても有利なことです。
それに比べると、同じ資本国でも
アメリカの企業進出は
コカコーラやマクドナルドが先陣をつとめていますから
消費を刺激するだけで、
生産を促進しているわけではありません。
それでもなおコカコーラやマクドナルドの方が
歓迎されているとすれば
それは日本政府のPR不足によるものだと
言うよりほかありません。

日本の政府は日本の企業の海外進出の尻押しをするどころか、
その邪魔をするような挙に出ます。
出先筋の大使館が
進出企業の起工式や開業パーティーに出ているのを
見たことがありません。
大臣が乗りこんでくるのは難しい問題が起った時だけです。
これだけ民間の後押しをしない政府も
珍しいと思いませんか。


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