第2074回
一番の岐路に立っているのは中国の政府です

サラリーが人民元の300元から
1000元になっただけでも、
天と地が引っくりかえるくらいの
大きな変化をもたらします。
先ずメシの食えない人がいなくなりました。
道を歩く人の着ている物が
目立ってよくなりました。
ひったくりもいなくなりましたし、
何よりも乞食の姿を見かけなくなりました。
観光地に行くと、
いまでも物売りがドッと押しかけてきますが、
あれは中国人独特の生計の道の一つであって、
中国人の国内観光旅行は
大へんな勢いでふえる方向にありますから、
今後もふえることはあっても
減る方向にはないでしょう。

政府では2010年に
所得倍増という予想を立てていますが、
それは全国的な統計数字です。
工業化のすすんでいる地域とか、大都会は
それよりずっとスピードが早いので、
私は2010年までに、
上海や北京では平均賃金は
3000元にはなるだろうと見ています。
とか広州とか、
あるいは蘇州や無錫や昆山のような
工業の中心地も当然、
それに準じた動きになります。
そうなると、
いままでに考えられなかったような光景に
私たちはぶっつかるようなります。

300元の3倍と1000元の3倍は同じ3倍であっても、
それによってもたらされるお金の使い方に
いままで想像もできなかったような変化が
現われるからです。
300元が1000元になる時は
都会地に出稼ぎに来ていた人たちの貯金と
家への送金がふえますが、
お小遣いがふえたと言っても
身につける物とか化粧品への支出がふえるていどです。
ところが、1000元で
生活のできる人のふところでふえた2000元は
人々のお金の使い方を一変させるだけでなく、
人々の物の考え方まで大きく変えてしまいます。
豊かになるにつれて共産党の元老たちは
危機を唱えてきましたが、
更に豊かになると、政府の唱えることに
耳を傾ける人が更に少くなります。
政府自体が大きく変身しない限り、
その統率力は見る見る弱体化してしまいます。
いま一番の危機に瀕しているのは
本当は政府なのです。
岐路に立たされているのも政府なのです。


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