第2013回
私が若い人の仲間入りができるわけ
年をとって見えないように
若づくりをすることも大切でしょうが、
何と言っても頭が退化しないように
自分の言動をコントロールすることが一番でしょう。
人は年と共に経験を積み重ねます。
さまざまな失敗をしたり、
いい目にあったりしているうちに、
それがその人の血となり肉となって
固定観念ができあがります。
経験に教えられてできあがった固定観念ですから、
容易に変えることができません。
ではそうした固定観念は
いつも正しいでしょうか。
昔のような農業社会で、
社会秩序に大した変化がないとすれば、
世の中に大した変化がありませんから、
昔、体験したことはそのまま通用します。
気象や天変地変に対する故老の知恵は
豊作や飢饉の予想にそのまま使えます。
だから人は年寄りを尊敬し、
年の順序に坐わる椅子の用意もしたのです。
でも工業化社会、情報化社会になると、
昔の知恵ではそのまま通用しなくなりました。
私たちの経験はいずれも過去の経験で、
そのまま未来に通用するとは
限らなくなったからです。
悪くすると、経験のあることが却って
邪魔になる場合もあるのです。
そうでなければ、
株なんか昔からやっている人に敵うわけもなく、
兜町は年の順序にお金を持っている筈です。
そういう物の見方が
頭の中のどこかにあるので、
私は新しい現象に接した場合、
一応はすぐに反応しますが、
それは私が過去に経験したことによってつくられた
私の固定観念が反応しているのです。
しかし、次の瞬間に、
あるいは間髪入れずして、
自分の固定観念ははたして正しいのか、
それを否定する反応を起します。
私が新しいことに軟柔に反応できるのは
私にそうした自分の固定観念に
否定的なリアクションがあるからです。
何の経験もない若い人に比べると
少しばかり複雑な反応ですが、
そうすることによって
私は若い人の仲間入りができるのだと
自分に言いきかせています。
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