第2001回
おじんのおしゃれ雑誌の読者になりました

最近、出版業界で
一きわ目立っている変化は
おじんのおしゃれをテーマにした男性雑誌が
平台を占領するようになったことではないかと思います。
新聞の大きな広告に魅かれて
私も本屋に入ると
何気なくペラペラとめくって見るのですが、
おじんと言っても私のような
人生も終わりに近づいた人のことではなくて、
30代から早くもおじんなんですね。

モデルに本物の中年男を使ったのでは
カッコがつかないということもあるでしょうが、
男は社会人になった途端に、
少くとも心理的にはおじんになってしまう人が
多いのかも知れません。
それにしても
モデルの身につける破れジーンズ１枚でも
驚くほど高価だし、
腕時計に至っては
明らかに桁が１つ違う値段がついています。
つまり手の届かないところにあるからこそ、
雑誌に載せる価値があると
解釈すべき性質のことかも知れません。

それでも雑誌をめくっているうちに、
自分ももしかしたら、
このくらいのおしゃれはできるかも知れない
という気になって、
いつしかＬＥＯＮとかＵＯＭＯとか
ＢＲＩＯとかいう雑誌を束にして
買って帰るようになりました。
それにしてもその重いこと。
ズボンの重しに使えるくらい分厚い雑誌を
ベッドの中で両手で支えて読むのは
骨の折れることですが、
ページをめくっているうちに、
このくらいの模様替えなら
自分にもできるのではないか、
この際、気分を一新するためにも、
いままでやったことのない服の着方を
やって見ようかという気になりました。

一つには気がついたら、
周囲で一緒になって走りまわっているのは、
みな30才前後の若い野心家ばかりで、
着ている物も趣味も私とはかなり隔たりがあります。
その連中から年寄り扱いをされるのをおそれているのが
おじん雑誌の愛読者なのです。
そうしたおじんたちに比べたら
私はそのまたおやじにあたるくらいの年齢ですが、
その私でも新鮮な気持になって
ページをめくっているのですから、
自分もその仲間に入れてもらうことにしようかと
思うようになりました。