第1848回
メリディアン・ホテルで勉強したこと
アンコール・ワットの寺院の
向って左側の塔に登る階段は
幅が狭くて傾斜が急なことで知られています。
登りは前に向いて上るので
まだいいのですが、
下りは下を向くと思わず足がふるえて
怪我をする人も少くありません。
そのためにステンレスの手すりが
脇についていますが、
うちの家内は自分の年のことも忘れて
手すりにつかまらず、
ころんで足にひびが入って
しばらくびっこをひいていたことがあります。
その話をきいていたので、
私は階段を上らず、
階段を上がり下がりする人たちを
ジッと見ていましたが、
若い人の中には登り階段をクルリと廻れ右して、
そのまま鼻歌まじりでスタスタと下りてくる
身体のバランスのとれた人もいるのです。
同じ手と足を持っていても、
人によってこれだけ違うものかと
感心もしましたが、
きっと人間の頭の構造も
人によってこれくらいひらきはあるんだろうなと
改めて意地の悪い観察をしました。
シェムリアップには
アンコール・ワットの古跡以外に
見るべきものはありませんが、
宿泊した新築早々の
メリディアン・ホテルの設計アイディアには
とても感心させられました。
敷地の広さは土地柄可能だったからでしょうが、
建物はカンボジアの伝統的な建築をうまくとり入れ、
屋根から壁まで土地の材料を使っているので、
ほとんどお金がかかっていません。
天井も高いし、フロントも清潔で美しく、
普通のホテルはロビィに椅子の数が少く
お客を立たせることが多いのに、
団体客が一せいに押し寄せても
ちゃんと坐れるだけの椅子が並んでいます。
その椅子も籐椅子に
少しばかりデザインを加えたものですから
コストは安いのに安上がりな感じがしません。
欲張りなホテルはここに坐ったお客に
コーヒーやお茶を飲ませることをしますが、
ティルームは少し奥に入ったところに別にあって、
ここではお金をとられる心配がないので、
どのお客も安心して腰をおろすことができます。
ここまで書いただけで、
ホテルプランをたてた人の基本概念が
浮んでくると思いませんか。
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