第1775回
コマーシャルの製作者は皆神経衰弱です

どこのテレビ局でも
少しでも多くの視聴者が
自分たちのチャンネルにまわしてくれることを
熱望しています。
視聴率をあげるために
どこのテレビ局のプロデューサーも
死物狂いの番組づくりに熱をあげます。
低俗と言われようと、
プロデューサーの知能程度を疑われようと、
見てくれる人さえふえればいいのです。
そのためゴールデン・アワーになると、
どこのテレビ局も、
何の足しにもならない時間潰しの番組をつくります。
おかげでご飯の時間はテレビを消して
静かに食事ができるようになって
有難いことは有難いのですが・・・。

もう一つはお客に見ることを強制するために、
番組の途中で放映を中断してコマーシャルを流すのが
当り前になってしまったことです。
みんな慣れっこになってしまったので、
コマーシャルがはじまった途端に
人々はほかの用を足しにかかります。
仮りに目がそのまま画面の方を向いていたとしても、
自分が見たくて見るコマーシャルではありませんから、
何の広告であったかさえ頭の中に残りません。
人によってはこんな大事な場面に
人の邪魔をする広告をさし込む奴の商品なんか
買ってやるものかと意気込む人さえおります。
テレビ局や広告製作者は自己陶酔のあまり、
見ている側の心理をほとんど考慮に入れないので、
このまま進むとテレビによる広告の効果は下がる一方です。

そうした反省が足りないどころか、
フツーの広告では
そっぽを向かれてしまうことをおそれるあまり、
売り込みたいと思う商品とは何の関係もないシーンが
スポットの大半を占めてしまいます。
残されたあとの1秒か2秒で
商品の宣伝をしたいと思っても
どだい無理というものです。
末梢神経だけに訴えるようなコマーシャルで
この困難な時代を乗りきることは
どう考えてもできそうにありません。

私は1ヶ月の間に
アジアのあちこちをとびまわっていますので、
違った国のホテルでテレビのチャンネルを
あちこちまわす立場におかれています。
日本に帰ってくると
経済全体が壁にぶっつかっているだけでなく、
広告も神経衰弱でユラユラ震えています。
テレビを見ている人たちがよくガマンしているなあと
とても不思議に思えてなりません。


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