第1739回
「景気は底を打った」に瞞されるな
不景気がダラダラといつまでも続くと、
誰だってうんざりしてしまいます。
早く恢復してくれないかと誰でも期待します。
でも期待することと実際に恢復するかどうかは
もう一つ別のことです。
景気が実際に恢復するためには、
景気は循環するものだという前提が必要です。
農業社会では景気は天候に大きく左右されましたが、
工業社会になると、
設備投資が一巡する期間に左右されるようになりました。
不況になって物が売れなくなって
物価が下がると工場生産も縮小しますが、
供給が不足して需要に応じきれなくなると、
設備投資がはじまります。
やがて増産体制が整うまで好況は続きますが
供給が需要を充たすようになると、
再び不況におちこみます。
戦後の日本ではそれが2年交替で起ったので、
人々はいつの間にか好況不況はくりかえすものだと
信じ込んでしまいました。
ですから不況が続けば
そのあとに好況が戻ってくると期待します。
政府も景気が恢復してくれば
政治がやりやすいので、
ちょっとそれらしき兆候が見えると、
「いよいよ本格的景気恢復か」と
景気のよい予想を発表します。
もしその通りなら、
銀行も潰れないですんだし、
日本を代表するような大企業や財閥が倒産したり、
球団のオーナーが代わったりしないですんだ筈です。
それがそうならずに、
次々と選手交替が起っているのは
かつてのようなビジネス・サイクルが
もはや過去のものになってしまったからだと
考えるよりほかありません。
もう景気は昔のような形では
恢復しなくなったのです。
その最大の原因は世界全体に生産力がついて、
欲しい物はいつでも供給のできる
万年、生産過剰の世の中になったからです。
不況におちいることはあっても
好況は長く続かないのです。
経済の成長している中国においてさえ
同じ傾向が見られます。
ですから万年生産過剰の中で
どうしたらお金が儲かるか
考える必要があるようになったのです。
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