第1608回
大富豪の行列には並んでいません
「我三十にして立つ」と
論語には書いてあるけれども、
30才で立っているとしても、
ぼんやり立っているだけで、
自分はどうしたらいいのか、
わからない人が多いのではないでしょうか。
もちろん、年が若くとも
その人なりにやりたいことがあって、
やりたいことに向って突進している人がいます。
スポーツのような体力で勝負をする分野は
短い時間的制限がありますから、
そんなに余裕はありません。
全力をあげて訓練をして
すぐに勝負に出なければ
チャンスを失ってしまいます。
歌手やダンサーや俳優のような仕事でも大抵そうです。
でも才能で勝負をする仕事は
成功する側よりも失敗する側の方が多いですから、
成功するにはどうしたらいいかを考えるよりも、
やりたいと思った仕事で成功できなかった人が
その後、どういう人生を歩んだらいいか
考える方が実際的で、
耳を傾けるに値いするところが
多いのではないでしょうか。
人生は自分が最初に考えたことで
成功できる確率は低く、
第二、第三の試みで成功できたら、
それでよしとしなければならないことの方が
ずっと多いのです。
ですからこれが自分の一生の仕事と決められる前に、
あれこれ目移りしたり、
ちょっかいを出して見たりするのは、
決して悪いことではないのです。
私だって文章を書く前は
文章を書いて50年もメシが食えるなんて
思ってもいませんでした。
作家という肩書を持つようになっても、
これでしか自分はメシを食って行けないのだと考えたことは
一度もありませんでした。
にも拘らず結果として
一生その地位から離れなかったのは、
その位置にいて世の移り代わりを観察し、
予言したり、人にアドバイスしたり、
物によっては企業化に直接たずさわることが
自分の性に合っていたからだと思います。
お金のすぐそばにいたので、
お金とは縁がありますが、
お金儲けが最終目的ではなかったので、
大富豪の行列に並んで
順番待ちはしておりません。
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