第1599回
13億が走って金持ちになります

少し前までは
「13億の市場なんて夢のまた夢だ」
とよく言われました。
「13億の安い労働力が存在しているのは事実だとしても、
貧乏な13億では市場になんかならない、
だから13億の市場があるなんて考えないことだ」
と警告する人をしばしば見かけました。

それですぐに思い出すのは
貧乏な日本の1億人の市場です。
終戦の時は1億人にも充たない9千万人の日本でした。
9千万人でも多すぎるから、
もう1千万人くらい減らさなくっちゃと
眞顔で議論されたものです。
その日本で工業化の道を歩むようになっても、
それは外貨を稼ぐためであって、
日本国内の消費は
日本人のメシのタネになるとは
思われていませんでした。

しかし、実際に工業化によって
毎年、新しい付加価値が生み出されるようになると、
それは日本人が分け合うことのできる富になりました。
労働組合はスクラムを組んで、
会社に賃上げを要求し、
会社は株主に渡す分を減らして
社員たちに分配しました。
そのお金で人々は家電製品や自動車を買い、
自動車や電化製品を売ってボーナスをふやした連中は
その他の工業製品を買って、
それぞれ相手にお金を儲けるチャンスをあたえたのです。
気がついて見たら、
日本はアメリカと肩を並べるほどの豊かな国になり、
素寒貧だった筈の日本人を相手に
世界中からブランド商品のメーカーが
東京に次々と金持ち相手の店を
ひらくようになったのです。
何もないところからでも
富は湧いてくるものだということを
日本人は世界中に証明して見せたのです。

それが13億人の貧乏人しかいなかった中国にも
起るだろうと私は見ています。
なぜならば何もないところから、
素材と労働力を組合わせると、
新しい付加価値を生み出すことができるからです。
小さな市場でも年と共に大きくなって行くのです。
人口の多いところでそれが起れば、
だんだんスケールの大きなものになります。
いまそのスタートが切られ、
13億が走り出したところです。


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