第1550回
中国人に日本ソバが受け入れられるのでは
ソバは日本人だけが食べる物で、
よその国の人は食べないものだというのが
私たちの常識です。
でもソバはもともと小麦も育たないような、
雨の少い痩せた土地にできる作物です。
昔から雨がふらないために
大飢饉になりそうな年に、
あわてて植えたのがソバでした。
だからソバは貧乏人の食べるものというのが
よその国では常識になっています。
中国でも例外ではありません。
そのせいもあって、
中国でソバの産地に行くと、
ソバは利益をもたらさない作物の一つだし、
それを栽培している農村も
決して豊かではありません。
ソバを加工した麺や饅頭も美味しいとは言えず、
私は食べ残してしまいました。
私たちは内モンゴルと雲南省のソバの産地で、
その土地のソバ粉を使って、
手打ちソバの実演をして見せましたが、
大へんな人だかりで、
できあがったソバを
日本から持ってきたソバつゆにつけて食べさせたら、
皆、美味しい美味しいといって大好評でした。
中国人は冷い物を嫌がりますので、
熱い天ぷらソバや
にしんソバもありますよと弁解したら、
「いや、冷くてもこれは結構美味しい」と
対外貿易に従事している
要路の人たちに絶賛されました。
産地だけでなく、
北京と成都と上海の消費地でも
手打ちソバの実演をしてみせました。
いずれも中華料理の本場みたいなところですから、
みんながどう反応するか心配でしたが、
「先ずうちから店をひらいてみてみませんか」と
どこの都市の人からも誘われました。
大都会はどこにも日本料理屋があり、
日本ソバを出していますが、
手打ちソバは一軒もありません。
そういう干しソバしか食べていませんので、
中国人はみな日本ソバは
まずいものだと思い込んでいます。
しかし、中国産のソバ粉を使ってつくった
手打ちソバを食べさせると、
皆、口を揃えて「これはいける」と賞賛します。
もしかしたら日本ソバは
中国人に受け入れられるのではないかというのが
今度の旅行の私の偽らざる実感でした。
そうだとしたら、
新しいビジネス・チャンスが
もう一つふえたことになります。
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