第1475回
「イル・ミリオーネ」の中国名は「素封」

イタリア料理屋の名前は
マルコ・ポーロの豪邸の綽名にあやかって
IL MILIONE で本決まりですが、
中国名前はどうしたらいいのでしょうか。
百万というのは百万長者という言い方が
まだ残っていますからいいのですが、
今日では億万長者と言わないと感じがでません。
ところが、中国では富豪とは言いますが、
百万長者とも億万長者とも言いませんから、
日本語そのままの漢字では
中国人には通用しません。

このへんのところで、
学のあるところを示そうと思えば、
「史記」にまでさかのぼってしまいます。
ご承知のように、
司馬遷の「史記」の中には
「列傳」という項目があって
その中には「遊侠列伝」という
ヤクザの親方について述べたページもあれば、
「貨殖列伝」と題して
官職や領土ではないけれど
金儲けのうまかった人たちのことが書かれています。
その代表格は越王句踐の宰相を辞して
19年間に3度も千金の利を得て、
そのうち2度までこれを散じて、
貧しい友人や疎遠な親戚に分け与えた
范蠡(はんれい)ですが、
そういう人はいつの時代でも、
どこの国にでもいるものです。

史記はこう述べています。
「富を得るにはどんな職業でもよく、
 財貨も常に特定の持主があるわけではない。
 才能のある者には財貨が集まり、
 不肖の者は蓄積した財貨さえ忽ち消散してしまう。
 千金の家は一都邑の君主に匹敵し、
 巨萬の富豪は王者と享楽を同じくするのであるが、
 これは素封とでも呼んだらいいのだろうか」と。

字引きを見ると、
「素封」とはすぐれた金持ち封上なけれども、
その富、封侯に等しい者と解読されている。
日本でも漢学の素養のある人なら
素封とか素封家という言葉は知っているから
中文名も意太利菜(伊太利は中国語で意太利と綴る)
「素封」とこれまた他に動かしようがなくなってしまった。
店の名前だけは誰が見ても超一流だが、
さて、肝心の料理はどうなのだろうか。
またちゃんとハヤってくれるのだろうか。
とだんだん心配になってきます。


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