第1441回
中国の弱点は長所でもあるのです

中国に対する評価は
ピンからキリまであります。
共産主義に対する毛嫌いから
肌の合わない中国人に対する反感まで、
政府の崩壊や中国経済のピンチを期待する予言もあれば、
中国が「世界の工場」になり、
やがて中国の国民所得が
アメリカのそれをしのぐ日が来ることを
数字で示した予想まで、
まさに百花繚乱、百家争鳴の観があります。

みなそれぞれに根拠があり、
なるほどと頷かせるデータには事欠きません。
ではなぜこれだけ意見が分かれてしまうのかというと、
いま中国で起っている現象が
どうなるかについての見方に違いがあるからです。
たとえば、いまの中国が共産党による一党独裁で
民意を反映していないと批判する人たちは
この体裁が頑強に持続すると内心考えています。
私は経済が発展すれば、
政府の要因も含めて、
人々の物の考え方も変わるから、
假りに同じ政府であっても、
政府のやり方は時代に応じて変わると見ています。

また国営事業が
民間企業や進出企業に市場を奪われて
赤字経営におちいれば、
失業者は更にふえて
大きな社会問題になると
悲観的な見方をする人がいますが、
私はいまの中国の失業問題は
社会不安をもたらすほど深刻ではないと見ています。
中国は夫婦共稼ぎが原則ですから、
夫婦のうちの一人が失業しても、
もう一人が仕事を持っていることが多いので、
口糊をしのぐことが何とかできます。
市場経済に馴染めない国営事業が
閉鎖か、人員整理に追い込まれても、
新しく誕生した民間企業や海外からの進出企業が
新しい仕事場を提供するので、
失業者が一方的にふえるわけではありません。
しかし新しい就職口が提示しくれる賃金の方が
昔の収入より多いので、
国民所得は産業の発展と共にふえる方向にあります。
もし膨大な失業者や農村の労働予備軍が
背後に控えていなかったら、
外国資本の進出がこんなに急激にふえたりすることは
先ずなかったでしょう。
中国の弱みは中国経済の発展にプラスする面もあるのです。


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