第1192回
付加価値のない所に商売はありません

株が下がるのは銀行が株を売るからではありません。
株が下がれば儲かる仕組みの投資信託が
株を売るからでもありません。
日本経済全体の将来に不安があって
株価が弱含みになっているところへ
大量の売りが出てくるからです。

ではどうして株式市場が弱含みになるかというと、
一口で言うと、付加価値を生む環境が
日本の産業界から大きく失われてしまったからです。
資本も資源もない日本がゼロから出発して
世界でアメリカと肩を並べる所得の高い国まで成長したのは、
日本で物をつくれば次々と付加価値を生む条件が
日本国内に備わっていたからです。

安価で良質な労働力、弱い通貨、チーム・ワーク
愛社精神、終身雇傭制、職人気質、等々
かって日本的経営の長所として
賞賛の的になった諸条件の中で
まだそのまま温存されているものもありますが、
少くとも2つのものが高度成長のプロセスで
失われてしまいました。
年中行事のようにくりかえされた賃上げ、
もう1つは国際収支の大幅黒字がもたらした円高、
この2つによって世界の工場基地としての優位が
失われてしまったのです。

その予兆は既に台湾と韓国が
日本の労働集約的な生産事業を
肩代わりした頃からありました。
タイやマレーシアへの工場進出がそれに続き、
共産中国の改革開放政策がスタートするに至って、
私は日本の工業生産の大半は中国大陸に移ることは
間違いないと確信しました。
なぜならば、日本の賃銀の30分の1の中国で
日本に負けないレベルの工業生産がはじまれば、
僅かな例外を除いて、日本で物をつくっても
付加価値を生むことは絶望的になってしまうからです。

付加価値を生む余地がなくなれば、
どんなに頑張ってもビジネスは成り立たなくなります。
国内で生産を続けようと思えば
新しく付加価値を生む仕事を探さなければなりません。
それができなければ大企業といえども
生き残れなくなります。
国全体としてそういう付加価値を生む仕事が
まだ見つかっていないのです。


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2003年6月15日(日)

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