第1076回
一軒だけの商売もいいものです

少し前までは料理屋をひらいて評判になると、
フランス料理屋でも中華料理屋でもすぐ支店を出しました。
店を何軒も出すと、業界でも成功者と見なされ、
顔が広くなります。

それが大衆的な居酒屋や焼肉屋になると
たちまち三桁台の店舗数になり、
実業家の中に数えられるようになります。
お金は儲かるようになるでしょうが、
その内容や料理屋としてのランクということになると、
日本を代表するレベルからは遠ざかってしまいます。

しかし、そういう風潮の中で、
一軒の店だけを頑なに守り続けている
職人気質の人もおります。
経営の才能がないのか、
それとも成功することにそれほど興味がないのか、
人によって違いますが、
ビックになることがハヤリだった時代には、
影がうすく見えたものです。
でも、料理もしっかししているし、
店もちゃんと繁盛しているのに、
流行に乗ろうとしないそういう料理人を見て、
私は一見識のある人だとそれなりに評価して、
「いまにあなたが正しかったことを
世間が認識する時がきますよ」
とわざわざ食事に行って本人を励ましたこともあります。

先ず社用族相手の高級料亭の大半が姿を消し、
4軒も5軒も支店を出していた
高級レストランの業績が上がらなくなり、
続いてチェーン・レストランも
赤字決算に直面するようになると、
一軒だけの店を守って然るべき弟子を
ちゃんと養成しながら料理の水準を維持し、
借金の返済に頭を痛めないですんでいるシェフのやり方に
改めて敬意を払いたくなります。
デフレでつつましい生活を強いられている
ごく普通の家庭の人たちが
親しい友人や家族を誘いあわせて行ってみたくなるような
小さなレストランは、ちゃんと商売になっているし、
お客さんからも大事にされる存在です。

スケール・メリットで勝負する時代は一段落しました。
これからこうした分野を目指す人は
大きな野心を抱かずに眞面目にコツコツと
積み上げて行くような生き方を考えて下さい。
一軒だけのレストランもなかなか捨て難いものです。


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2003年2月19日(水)

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