第1053回
見るときくとでは大違いの貴陽でした
ことしの正月は3日に香港から成都にとび、
3日間成都に泊まって、6日に成都から貴陽にとび、
8日に貴陽から長沙にとび、10日に長沙から上海へ、
そして、12日に北京に向って、
16日に北京から東京へ戻ってきました。
と言っても、いまこの文章は
上海のガーデン・ホテルで朝早く起きて書いています。
北京、成都、上海には私のオフィスもあり、
定期コースの中に組み入れられていますが、
貴陽と長沙はかねて一度は訪れてみたい
と思っていたところでした。
貴州省は俗に「天に3日の晴天なし、
地に3里の平地なし、民に3分の銀もなし」
といわれる貧しい土地柄で、
貴陽はその省都ですが、
滅多に太陽が見えないので
貴陽と言う名がついたのだと言われています。
現に上海や広東省あたりに
出稼ぎに来ている人の中には
貴州省出身者も多いので、
私には貧しいという先入観がありましたが、
どのくらい貧しいか
自分の目で確かめてみなくちゃと思ったのです。
ところが実際に貴陽に下り立って見て、
改めて見るときくは大違いということを実感しました。
貴陽が山に囲まれていて
所得の低いところであることに偽りはありませんが、
ホテルやレストランで働いている若い人たちも
実に礼儀正しくて親切で、
きいた事に対してもちゃんと丁寧に答えるし、
チップをあげてもすぐには受け取ろうとせず、
無理矢理押しつけると、
とても喜んで玄関口まで送ってきて、
タクシーが走り出すまでそこから離れようとしないのです。
ここの最大の特産物は人間だということに
たちまち気がつき、私は貴州省にとても好感を持ちました。
もし上海に何千人の従業員を使う
工場をつくることになったら、
働く人は大半は貴州省から集めよう、
またもし日本で年寄りの面倒を見る看護婦や
農業の作業員を中国から呼ぶとしたら、
貴州省にこようと思ったほどでした。
現に偶然飛び込んだレストランで
私たちの注文をきいた19才の男の子が
あまりに気がきいていたので、
その場で引っこ抜きをしてしまいました。
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