第1017回
台湾人は中国人の中のユダヤ人?
中国が開放政策に踏み切るようになると、
大陸と台湾の賃銀差が目立つようになりました。
台湾で1人雇えるお金で20人は雇える勘定ですから、
大陸で生産をすれば、コストがかなり安くなります。
傘をつくったり、運動靴をつくったり、
鞄をつくったりする仕事は台湾でやっていると
そのうちに採算に乗らなくなりますが、
大陸でやれば競争に打ち勝てるばかりでなく、
かなり利益をあげることができるようになります。
また兵隊に徴用されて
有無を言わせず台湾に連れて行かれた老兵たちは
台湾にいると守衛くらいの仕事しかありませんが、
退職金や貯金を持って故郷に帰れば、
ちょっとした店を持って
老 (店主)になるくらいのことはできます。
商才にたけた人になると、故郷に錦を飾るだけでなく、
たちまち顔役にのしあがることができるのですから、
台湾帰りは金持ちとして鄭重に扱われるようになります。
それが台湾で既に一角の成功をした人なら、
大陸は新しく事業を展開できる新天地になります。
台湾で成功した事業をそのまま大陸に移すこともできますし、
大陸の人を相手の商売なら
台湾の60倍の人口を抱えていますから、
途轍もない大市場に乗りこんだようなものです。
政府と政府が争うことは商人の関知することではありません。
中国人の商人はよくユダヤ人と比較されますが、
国を捨てて台湾海峡を渡った台湾人は
もうとっくの昔から国境を越えた存在になっています。
そういう人たちがいまやアメリカとは
反対の方向に動いているのですから、
メシのタネをたずねて辿りついたのが
中国大陸だということになります。
ブエノスアイレスやヨハネスブルグの次に辿りついた先が
中国大陸であるということは
いま世界のメシのタネは
どこにころがっているかを物語っています。
中国大陸にメシのタネがあることを
いち早く探がしあてたのが台湾の人たちなのです。
もしかしたら台湾人は中国大陸で
ユダヤ人のような役割をはたすようになるかも知れません。
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