第999回
前途洋々とは先が見えないという事です
いまは新しい仕事を探がす方が
会社を辞めるよりずっと難しくなってしまいました。
終身雇傭と年功序列給で人事ががっちり堅められた時代には、
大企業はほとんど中途採用を認めませんでしたから、
一旦、会社を辞めると再就職は容易ではありませんでした。
それでも人手不足が続いていたので、
選り好みさえしなければ、
中小企業に職を得ることはできました。
いまは中小企業も仕事が減って
働く人を減らす立場にありますから、
再就職はもっと難しくなっています。
にも拘らず、会社を辞める人は昔よりもっとふえています。
多分、世の中が豊かになって、
しばらく失業しても何とか生活できるだけの蓄えを
持った人がふえたのでしょう。
望むような職にありつけない場合でも、
いざとなったらフリーターとして働く先に
困らないという環境におかれているということもあるでしょう。
このへんのところが、
昭和のはじめ頃の大恐慌時代の失業者と
一番大きく違っているところだと思います。
ちょうど世の中が大きく変ろうとしている時ですから、
会社も余剰人員の整理をしたがっていますし、
働いている人にとっても
もっと目の醒めるような生き甲斐のある職場はないものかと
考える時期に来ていますから、
どちらにとっても悪い話ではありません。
では辞める側と辞められる側と、
どちらがつらいかというと、(年齢にもよりますが)
恐らく辞めさせる側でしょうね。
辞めてもらって荷が軽くなると言っても、
あとの仕事がなかなかうまく行かないからです。
銀行にしても、ゼネコンや不動産会社にしても、
全くどうしていいのか、どこの経営陣も頭を抱えてしまいます。
その点、辞める側は「ハイ、お世話になりました」で
いった途端に広い世界が目の前に拡がってくるのですから、
無限の可能性があります。
だから前途洋々と言いたいところですが、
視界の広がった分だけ何も見えて来ないというのが
本当のところでしょう。
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