第995回
日本人相手の商売を考えないこと
武力が世界を支配した時代には、
軍隊の動くところにお金も人もついて行きました。
関東軍が満州を支配すると、お金が関東軍に集まり、
関東軍から民間に流れますから、
そのお金欲しさに商人たちが集まってきます。
一番熱心なのは大阪商人でしたから、
軍旗の赴くところ、前垂れの商人たちが
ゾロゾロとパレードのあとについて行ったものです。
いまは安く物のつくれるところにお金が流れるので、
お金のあとに人がついて動きます。
人がついて行くと、またその人たちのふところを狙って
新しい商売がついてまわります。
たとえば、いまは上海と
かつて日本の植民地だったことのある大連に
日本の工場が一番たくさん集まっています。
南の方で言えば、深とか、
そのお隣りの東莞もその仲間に入ると言ってよいでしょう。
これらの地域に一番早くできるのは日本料理屋で、
その次はカラオケも含めた飲屋です。
さしあたり現地で働いている日本人のふところを
あてにした商売です。
日本人の間で読まれる日本語の雑誌もその類だし、
日本人の引越しを手伝う商売もあれば、
安売りの切符を売る旅行社もあります。
いずれも日本人相手ですから、
大繁盛しても売上げが知れているし、
年をとって隠居するまでやった人でも
金持ちになった人はおりません。
どうして日本人は日本人を
相手にした商売ばかり考えるのでしょう。
さしあたりあまり元手がかからず、
気安くはじめられるからでしょうが、
どこに行っても外国にいる日本人の数は少いのですから、
日本人を相手の商売を考えてはいけないのです。
中国のように現地人の収入が
駐在員の収入の何十分の一しかない土地でも、
本当に商売に成功したかったら、
先ず日本人を相手に商売することは
頭の中から払いのけて下さい。
日本流の商売をやるのはいいのですが、
中国人を相手にした商売である必要があります。
「さすが日本人がやっただけのことはある」
と中国人に誉められるような商売のやり方が
最大のポイントです。
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