第970回
値切られないですむ商売を考えましょう

物ができすぎて買う人が少なくなったから
デフレになったのか、
それともデフレになって物が売れなくなって
物価が下がったのか、
多分、どちらも真実の一面をついていると思いますが、
物をつくったり、できあがってきた製品を売る商売の人は
デフレの長期化によって
言い知れぬ苦痛を味わうことになります。

自分だけ苦境をくぐりぬけようと
家まで同業者より安売りをすると、
一時的にはお客がどっと集まりますが、
同業者も指を食わえて見ているわけがありませんから、
安価が更に安価を呼んで、
結局は利益が減った上に売上げがおちこんで
商売が成り立たなくなってしまいます。
ガタの来た企業から先に倒産しますが、
倒産を免れた企業も安値競争は避けられませんから、
経営は楽ではありません。

こういう時代に激しい競争の中にとびこんで
うまく事業を拡大した勇ましい人たちもありますが、
あるスケールまで来ると成長がとまってしまって、
必らずのように株価も冴えなくなってしまいます。
店と従業員の数がふえた分だけ、スケールの大きさが重荷になって
先発した倒産組のあとを追うのではないかと、
内心、恐怖にさらされる経営者も少くありません。

それに比べると、ヨーロッパは
ずっと昔から景気にそっぽを向かれ、
店じまいをする店は店じまいをしてしまいましたので、
潰れずに生き残った店はそれなりに収支がつぐなって
潰れなくなっています。
その代わりそんなに安売りをしなくとも
何とかやって行けるだけのお客を持っている必要があります。

日本でも、もしかしたらヨーロッパ並みに
安売りをしないでもやって行ける業種と
商売のやり方を考え出した人だけが
店を閉めないですむ時代が来るかも知れません。
どうせ安売りをしても生き残れない以上、
安売りをしなくともお客が来てくれる商売のやり方を
考えるにこしたことはないのです。
そういう視点に立って
今日からでも商売の工夫をするのとしないのとでは
大きな違いが出てくるとヨーロッパを歩きながら考えました。


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2002年11月5日(火)

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