第966回
久しぶりのベニスで感じたこと

いま私は窓からレマン湖の見えるジュネーブのホテルで
この原稿を書いています。
ここに来るまでの間に、イタリアのベニスと
ミラノに2日ずつ泊って、観光地である水の都と
ファッションの震源地がどんな変わり方をしているか、
自分の眼で見てきました。

ベニスは5回目で、もともと歴史のある古い観光地ですから、
建物も通りもそっくり昔のままですが、
いつも気に入って泊っていたグリツテイ・パレスがとれなくて、
サン・マルコ広場にあるダニエリになってしまいました。
このホテルには以前に1回泊ったことがあって、
骨董品のようなホテルだなという印象を持っていましたが、
改めて泊って見て、建物も働いている人たちも
手入れをしないまま年輪を重ねた感じで、
最近、満潮になると水浸しになることが多くなって
「ベニスを見たかったら、いまのうちに」
を象徴しているようないささかうらぶれた趣きがありました。

すぐ近くにハリス・バーという有名なレストランがあって、
辻静雄さんに紹介されて以来、
毎回ベニスに行く度に必らず食事に行っていました。
かつてはミシュランのガイドブックでも
二つ星がついていたのが一つ星になり、
今回はついに全く星がなくなってしまったので、
「ハリス・バー・お前もか」と思いながら
勝手知ったドアを明けて中に入りましたが、
1階は大衆向けの気楽な店になっていて大入満員。
その中をくぐり抜けて上がった2階は
テーブルのおき方まで昔のままで、
食事の味もおちていませんでした。
昔の味のままであるために
ミシュランから嫌われたのかも知れませんが、
大衆化は時代の勢いですから、
これはこれでいいのだろうと納得しました。

それに比べると、ハリス・バーから
グリツティ・パレスまでの通りが
一流ブランドの町並みになっており、
老舗の中にまじって新興ブランドがそれをしのぐ勢いで
お客を呼んでいるのが対照的でした。
ファッションの世界の移り変わりは
商売の世界がどう変わろうとしているかを
私たちに教えてくれている感じでした。


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2002年11月1日(金)

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