第911回
蘭州はシルクロードの玄関口です
蘭州はシルクロードの玄関口です。
西方の匈奴とか胡の異民族がくりかえし中原に攻め込んだので、
中原の王朝はそれを鎮圧するために遠征軍を送り出しました。
蘭州のお土産屋さんではどこの店にも「葡萄美酒夜光杯」という
有名な王翰の「涼州詞」という七言絶句を書いた掛軸が並んでいます。
「夜光杯という石でつくった杯にブドウ酒を注ぐと、
たちまち琵琶の音がきこえてきた。
どうか砂の上に寝ころがって酔いどれている私を笑わないで下さい。
昔からいくさに狩り出されて無事帰って来た人が何人いると思いますか」
という哀愁のこもった漢詩です。
これを吟ずるだけで、北に向っても西に向っても万里の長城をつくった
歴代王朝の苦悩の表情がジーンと胸につたわってきます。
西から東に伝来してきた仏教は
かつてシルクロードとチベット経由の
二つのルートを通って中原に入ってきましたが、
やがてシルクロードはあとから起った回教に占領されて、
専ら回教を信奉するウルグイ族の住む地域になってしまいました。
蘭州には白い帽子をかぶった回教徒の姿が多く見られ、
主として牛肉を使った回教徒の食べる清真料理の店も
たくさん見られます。
蘭州を代表する牛肉麺は馬子祥牛肉麺というのが最も有名ですが、
その店にも行ってきました。
一口、口に入れて見て、なるほどと納得が行きました。
蘭州牛肉麺の店は北京をはじめ、あちこちにありますが、
手打ちラーメンの歯ごたえと言い、スープの見事さと言い、
その名に恥じないものでした。
蘭州は黄河に沿って全長20キロにも及ぶ細長い町ですが、
こんな人里離れたところによくもこれだけ高層ビルの林立した
大都会があるものだとびっくりしてしまいます。
この甘粛省の首都からはじまって西北、西南に向かって
いま西部大開発がはじまったばかりですが、
もとよりそう簡単に近代化は進まないでしよう。
でも甘粛省とか貴州省は開発の遅れた分だけ
昔の中国を知る上で役に立つ、面白い地域です。
あまり近代化が進まないうちに行って見るのがいいですね。
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