第909回
西安に行ったら名物ギョウザはおよし
「中国の過去を知りたかったら、西安へ」
と私はいつも言っています。
中国の全国統一をやった秦の始皇帝が全国に号令したり、
万里の長城をつくらせたりしたのもこの西安だし、
唐の時代に玄宗皇帝が楊貴妃を溺愛して国を傾け、
安禄山の謀叛によって都落ちをしたのも
この西安で起ったことです。
西安にはそうした歴史を物語る遺跡が数々残っています。
始皇帝の死後、等身大の兵隊や将軍たちの人形を陶土で焼いて
墳墓の中に埋葬したのが畑をいじっていた
農民によって偶然に発見されたのは有名な話です。
それがいま西安市の最大の観光資源になっています。
そのコピーがお土産として売られていますが、
その等身大の人形を私は二体ほど買って、
うちの上海のビルの一階に飾っています。
「色んな人形がありますが、どの人形にしますか」
と部下に聞かれて、私は開業したばかりの
八百半第一百貨の展覧会場まで買いつけに出かけました。
門番ですから、
如何にも強そうな兵隊を二体選べばよかったのですが、
私は一体は武拳を持った怖い顔をした人形、
もう一体は如何にも頭のよさそうな、
平和裡に話し合いをつけそうな表情の
武拳を持たない人形を選びました。
武力はちらつかせるが、物事は基本的に、
交渉で片づけるものだと私が思っているからです。
でも西安は歴史のある人口700万の省都にしては
食事の何ともまずしい町ですね。
一番有名なのは百種類もの餃子(ぎょうざ)を出す徳発長という店で、
どのガイド・ブックにもおいしい名物ギョウザと紹介されていますが、
これほどまずくて喉を通らない食べ物も少ないでしょう。
ガイドブックの執筆者は自分で食べたことがなく、
ほかのガイドブックの引き写しをして
本をつくっていることがわかります。
西安においでになるのはおすすめですが、
どれだけまずいか試すためならいざ知らず、
西安名物のギョウザはおやめになった方がいいですね。
レストラン業を国営でやると改良や創意工夫の余地が全くなく、
十年一日のように同じことがくりかえしになるという典型です。
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