第876回
即効性のある漢方薬は偽物でしょうね

痩せ薬が大へんなブームで、
もし飲んだだけで効果があって副作用のない薬があったら、
たちまち財をなすであろうと言われております。
しかし、副作用がなくて確実に痩せられる薬は
西洋医学の範囲内ではいまのところまだありません。

それに比べると、漢方は身体の調子を整え、
バランスをとることを常々唱えています。
即効がない代わりにバランスがとれるようになりますから、
時間をかけてやれば確実に効果があがると説得します。
漢方の薬材はごらんの通り大半が草根木皮の類ですから、
仮に薬効がなかったとしても人畜無害だろうと
人を納得させることができます。
そうした盲点をついて悪徳漢方商が横行し、
漢方の処方の中に西洋医学の化学薬品を
無断で投入することがままあります。

たとえば副腎ホルモンはリュウマチに効くけれども、
副作用があると言うので、使用を禁じられています。
一時期、台湾の漢方の錠剤で
とてもリュウマチに効く薬があるといって評判になり、
日本からの観光客が
漢方薬店の店頭を賑わしたことがあります。
しかし、間もなく
副腎ホルモンが混入されていることが突き止められ、
宮殿のような豪勢な本社を建てた漢方薬店が
閉店を命ぜられ、刑事訴訟沙汰になったことがあります。

最近、厚生労働省にあげられた中国産の痩せ薬も
漢方薬の偽物なんですね。
一家相傳の秘薬ですという宣伝文句を使うと、
「もしかしたら」と思うところに人間の弱さがあります。
漢方でたちまち著しい恢復があったとすれば、
「もしかしたら漢方薬の偽物じゃないだろうか」と
疑って見ることです。
となると、なかなか効かないのが
本物の漢方薬ということになりますが、
漢方薬の偽物がこれだけ有名になると、
人畜無害の草根木皮まで
一緒に排撃の対象になってしまいます。
本当は西洋医学の薬品だって
気休めに飲んでいるだけでしょう。
風邪の薬だって、胃腸の薬だって。


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2002年8月3日(土)

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