第752回
円の大洪水を防ぐダムがなかったのです

成長経済の時代に
どうして銀行が大きな役割をはたしたかというと、
日本人は物づくりには熱心だが、
働いて貯めたお金をどう動かして
「お金にお金を生ませるのか」ということには
ほとんど関心を持っていないからです。

貯蓄をするのは老後のためと不時の出来事のためであり、
あとは子供の教育とかマイホームを建てるためで、
それ以外のことは考えるのも面倒臭いというのが
日本人に共通した金銭感覚です。
ですから収入の中から節約して捻出したお金は
銀行や郵便局に持って行って貯金をします。
比較的経済観念のある人は
利息の高い定期預金を選びますが、
あとは何年でもそのまま預金を続け、
インフレでお金が目減りするようなことが起っても
一切、関知しません。

10年に物価が倍になると、定期預金の金利は
7%以上ないと追いつきません。
地価の高騰に対しては全く手のほどこしようもありません。
それでも定期預金することをやめなかったのは、
投資の方法に対して無知だったこともありますが、
そんなことによけいな頭を使わなくとも、
完全雇用が続き、生活に困ることがなかったからです。

一方、お金を集める側の銀行も支店長以下
全従業員を総動員して預金集めに奔走し、
3月の決算期にどのくらいの預金を集めたかで
実績を評価され、昇進の参考にもされました。
集めた預金は融資の元資になり、
貸出と預金の間の利ザヤが銀行の利益になりました。

ところが、万年赤字だった国際収支が大幅に改善されて、
外貨が日本に貯まるようになると
情勢が一変してしまいました。
日本の貨幣制度は
大幅黒字を想定してつくられていないので、
外貨を準備金として円が発行できる仕組みになっています。
輸出超過によって外貨がもたらされると、
それを裏づけにして円の発行ができます。
黒字が続くと、輸出で稼いだドルを日銀に持って行って
円に替えてもらえます。
黒字がふえればふえるほど
日本国中が円の大洪水になってしまうのです。


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2002年4月1日(月)

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