第743回
約束手形は日本独特の支払い手段です
先立つ物はお金だと言います。
転業するにせよ、創業するにせよ、
いくらいいアイディアがあっても、
それを生かすための人とお金がないとはじまりません。
転業をする人は過去に事業をやった経験があり、
いままでやってきたことが思わしくないために
商売替えをするわけですから、
そんなに潤沢でないにせよ、少しは財産もあり、
またどうやったら必要な資金が捻出できるかわかります。
若い人が創業したり、
脱サラをした人が新しい仕事をはじめる場合は、
大した元手もないし
どうして資本を調達したらよいのかもわかりませんから、
たちまち行き詰まってしまいます。
もちろん、最初から十分な資本があって
スタートのできる企業などありません。
日立製作所だって
四畳半からはじまったと言われています。
ましていままで働いていた職場で新しい穴場を発見し、
会社をやめて創業しようと思い立った人は、
いままでがサラリーマンですから、
充分な貯蓄もないし、親兄弟親戚からかき集めても、
1つの企業を運営して行くに足るだけの
金額にはなりません。
そういう場合どうするかというと、
成長経済の時代なら、
手形と銀行からの借入れでやりくりをしてきました。
敗戦直後は日本国中が着の身着の儘でしたから、
資本などないのが普通でした。
それでも創業できたのは、物をつくれば売れるという
社会的背景があったからであり、
お金の回収ができるまでやりくりができたら
何とか首をつないで行くことができたからです。
そこで苦肉の策として約束手形を発行して、
2ヶ月後とか3ヶ月後まで支払いを待ってもらいました。
その間に販売代金が回収できれば、
利益を積み上げて
企業を大きくして行くことができたのです。
手形になれた日本では
手形は世界中どこにでもあると思いがちですが、
手形はお金のやりくりに困った
日本企業の窮余の一策で、
アメリカにもヨーロッパにもありません。
従って外国に持って行っても通用しません。
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