第727回
中小企業は廃業も転業もできます
資本主義は自由競争の社会で、
競争を妨げる色々の規制は
排除すべきだと言われています。
ビール会社は何社にとどめるべきだ、
酒タバコを売るのにはライセンスが必要だ、
と言った制約は、既得権を保護するもので、
自由競争を妨げることは確かですが、
デフレが現実になって見ると、
これは明らかに
自由競争を放任しておいた結果、もたらされた苦しみと
言うことができます。
もっと勝手に競争させれば、
もっといい物をもっと安く提供させることになるから
いいじゃないかというのが自由経済論者の考え方ですが、
設備も過剰になるし、
在庫の山になって資源の浪費につながる面もあります。
それでも独占を許したり、
利益を壟断されたりするよりはまだましだ
という考え方はありますが、
自由競争の結果がデフレになり、
多くの企業倒産を招いたり、
失業者を出したりということになると、
はたしてこれでいいのかと思う人も少なくはないでしょう。
マルキシズムが一世を風靡したのも、
資本主義の持つそうした欠陥が
はっきり見えてしまったからです。
今回のデフレは1929年の世界大恐慌の時よりも
工業化が進んでから起っていますから、
恐らくスケールもずっと大きいし、
長期化する心配があります。
過剰生産とわかっても供給がストップできないとなると、
ほとんどの分野で淘汰がはじまります。
自動車の生産設備は実需の倍はありますから、
世界的スケジュールで競争をすれば、
競争力のないメーカーが押し潰されます。
一番弱い韓国のメーカーが真っ先にピンチにおちいり、
日本でも日産、三菱、マツダ、
更にはトラックやバスのメーカーが
経営難に見舞われています。
何千億円という設備投資をしたメーカーは
吸収合併されるか、
買収されて再出発をするよりほかありませんが、
その点、中小企業なら倒産してそれで一巻の終わりです。
その代わり中小企業は廃業することもできれば、
転業することもできます。
そこが中小企業と大企業の違うところで、
中小企業のよいところでもあります。
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