第720回
新しい付加価値の後を追えばよい

では新しい付加価値はどこにあるのでしょうか。
万年供給過剰の世の中になれば、
供給過剰になった分野から
競争に負けた企業は淘汰されてしまいます。
会社が倒産すれば、巨木が倒れて鳥や猿が逃げ出すように、
人間も会社から逃げ出してしまいます。

競争に打ち勝った企業も楽ではありません。
生き残った同士でまた激しい競争が展開され、
過剰生産が販売価格を引き下げ
デフレ現象は容易におさまらないからです。
かつて農業の豊作貧乏がありましたが、
工業による世界的な規模での豊作貧乏は
今回がはじめてです。
アメリカではテロ事件後、
「もう景気は底を打った、
 IT産業を牽引車とした恢復は近い」
といった希望的観測がなされていますが、
供給過剰がそんなに簡単に片づくものなら、
供給過剰の先頭を走る日本が
10年以上も沈没に沈没を重ねて、
いまだに泥沼から脱け出せないでいるわけがありません。
デフレ志向では日本が世界の最先端を走っているのです。

デフレになったからと言って、
みながメシが食えなくなるわけではありません。
一つの池が枯れれば、また別の池があります。
石油資源が堀りつくされてしまえば、
別の石油層を開発すればいいのです。

工業生産が日本でやれなくなれば、
生産基地は中国に移ります。
中国で日本の半分の値段で物がつくれるとすれば、
中国と日本との値段のスキマに
新しい付加価値が生まれます。
この付加価値をめぐって取り合いがはじまりますから、
いつまでもスキマが残っているわけではありません。
でもスキマがある限り、そこに付加価値があり、
儲けのタネがあります。
儲けのタネがあれば、
カネもヒトもしぜんに集まってきます。

こうした国際間の格差を狙って成功した代表は
何と言ってもユニクロでしょう。
こうした分野の仕事は無数にあり、
まだまだ未開発だと言ってよいでしょう。
いずれも物を買って来て売る仕事ですが、
ただ買って来て売るだけの仕事ではありません。


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2002年2月28日(木)

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