第614回
台湾、香港、シンガポールも皆アウト

つい昨年まで折角、
香港や上海につくった支店や現地法人を引き払って、
日本に引き揚げる企業があとを絶ちませんでした。
リストラがはじまって、
経費節約のために
十把一からげに整理の対象になってしまったのです。
いよいよこれから仕事になる時が来るのに、
と私は他人事ながら勿体ないことをするなあと
思っていました。

ことしになると、
香港への再進出こそあまり見られませんが、
上海をはじめ、深とか大連とかへの企業進出は
雪崩現象を起しています。
中国のシリコン・バレーである
北京中関村への半導体業者の進出も
目を見張るものがあります。
しかし、これは日本だけに起っていることではありません。

香港の工場は
ほとんど隣接する広東省に移ってしまっているし、
台湾は既に早くから
昆山市や東莞市に工場を移していますが、
この1、2年に台湾経済の大黒柱とも言うべき
電子製品の会社の大半が
大陸に近代設備の工場を新設しています。
またシンガポールのIT産業も
シンガポール政府が現地政府と合弁して造成した
蘇州工業団地に移動していますから、
激しい空洞化は見舞われ、
株価もかつてない低水準まで下がっています。

リー・クワンユー前総理も
「我々は香港のように
 生産事業のほとんどを広東省に持って行かれるような
 愚かなことはしない。
 付加価値のあるハイ・レベルのIT産業は
 シンガポールに残すよう万全を盡す」
とシンガポールの大学で講演していますが、
事態はそれほど甘くはありません。
中国大陸はすぐにも追いつき、
安い労働力と国内の大きな市場を背景に
無敵の競争に打って出ることは目に見えているからです。

日本のハイテク産業がどんな形で生き残るかは
これから中国とどういう形で共存を図るかに
かかっているでしょう。
ロウテクは中国につくらせて売る方にまわるとしても、
ハイテクはまだ工業的先進国として
1日の長があるからです。


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2001年11月14日(水)

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