第597回
悪いニュースはこれから出てきます

物の見事に、と言ってよいほど
お金儲けのタネが消えはじめました。
たとえば、テロリストがニューヨークの
ワールド・トレード・センターを破壊したくらい、
戦争の被害に比べたら、物の数ではありません。
しかし、それをきっかけにして、
人々が財布の紐を締めはじめると、
その影響たるや測り知れないものがあります。

経済現象は人間心理の実験台みたいなところがあります。
テロを怖がって海外旅行のキャンセルが相継ぎ、
日本の旅行社のツアーの取消しだけでも
500億円にものぼると新聞は報じています。
日本航空の本年度の決算は
400億円の赤字になるそうです。
日本で起ったことは
ほんのその一角の出来事にすぎませんが、
ご本家のアメリカの航空会社に至っては
短期間に10万人ものレイオフがあったばかりでなく、
政府が先頭に立って救済資金の緊急支出に
乗り出しているのを見てもわかります。

スイス航空やサベナ航空まで
一せい休航の騒ぎになりました。
本当はテロが発生しなくとも
既に極端な財務のピンチにおちいっていたのが、
いい口実を見つけたというのが真相でしょう。
拡張のしすぎの咎めが出ると、
その反動で産業界全体が必要以上に萎縮します。
アメリカに向うアジアの航空会社も
軒並み乗客、貨物とも減少しており、
キャセイ航空は12%おちこんだと
香港の新聞が報じています。
航空会社の株価が大下がりに下がったとしても
不思議ではありません。
中東で戦争が起れば、石油が大暴騰する筈なのに、
今回は逆に値下がりしているくらいですから。

飛行機に乗る人が減れば、観光収入も減るし、
ホテルの空室率はふえます。
それも2桁台になりますから、
ただでさえ四苦八苦しているのが
一段と業績悪化することは避けられません。
これらのマイナス要因が統計数字に現われるのは
まだもう少し先のことですから、
ニューヨーク取引所のダウ平均が小康を得ていることに
安心してはおられません。
悪いニュースは小出しに、
しかし、息長く続くと思って下さい。


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2001年10月28日(日)

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