第583回
「文明の衝突」は長期戦になります

国と国との利害関係の衝突なら、
利害の調整をすれば片づきます。
また有無を言わさず武力に物を言わせるなら、
こぶしの強い方が相手を黙らせることもできます。

昔は国境の壁が高く、
一つの国から別の国に行くのも容易でなかったし、
異国間に交流があったとしても、
それはごく少数の人に限られていました。
だから宗教や国家的な利害で
争いをくりかえしてきましたが、
こんなに人の行き来が盛んになって、
お互いのアラまで見えてしまうチャンスは
ありませんでした。
いまのように、貧乏国の人が
金持ちの国の人々の生活の中身まで覗き込み、
反対に飢え死の恐怖に曝されている国の人たちが
それにもめげず、
次から次へと子供を生んでいるのを見ると、
お互いに協調する精神よりも、
相反撥する感情の方が先に立ちます。

たまたまアメリカの場合は、ユダヤ人の発言権も強く、
パレスチナ問題でイスラエル寄りだと
イスラム側から思われていますから、
金持ちに対するそねみと
ユダヤに対する憎しみがごっちゃになって、
不倶戴天の仇敵と思われているところがあります。
その上、「貧乏人の子たくさん」で、
ここのところ急激に人口がふえていますから、
その連中から神風特攻隊のようなことをやられたのでは、
アメリカはどこからどう手をつけていいのか、
わからなくなってしまいます。

ブッシュ大統領は
「テロとの戦争だ」と言いましたが、
姿を見せない相手との戦争ですから、
回教の過激派との戦争というよりは
イスラム文明と資本主義文明との衝突と
見た方がいいでしょう。
アメリカに基地を提供しているパキスタンをはじめ、
回教の国々でも反米ムードは強いのですから、
アフガニスタンという特定の地域の問題が
片づいたとしても、
文明の衝突はそう簡単にはおさまりません。
「長期になることも覚悟」と
ブッシュさんも言っていますが、
これはグローバル化によって表面化してきた
新しいトラブルと考えるべき性質のものでしょうね。


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2001年10月14日(日)

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