第569回
日本人と台湾人はこんなに違う
東京も上海も他所者にとっては同じ異郷だと言っても、
日本人に通じません。
東京は同じ日本の国の中にあって、
日本語が通ずるけれど、上海は外国であり、
日本語では通じないと思っているからです。
そういうところが日本人が自分たちのことを
島国根性だと卑下する理由になっているのでしょう。
これは1つには日本人が
4つの島の中で比較的楽に生活して行けるだけの
好条件に恵まれていたからでしょう。
外敵の進攻も受けず、大した飢餓にも曝されず、
従って外国の言葉を覚える必要もなく、
孤立をしても生きて行けたことと関係があります。
敗戦後、工業化によって
世界を相手の商売をやるようになりましたが、
基本的に外へ出て行かなくとも
メシの食える環境に大きな変化はなかったのです。
それに比べると、台湾人のおかれた立場はまるで違います。
台湾の人たちは
もともと大陸の福建省や広東省で食い詰めた人たちが
禁をおかして逃げ出してきた移民の末裔です。
古くは鄭成功の時代から
新しくは蒋介石の時代に至るまで
難を逃れてきた移民の血が流れていますから、
メシが食えなくなったら、
新しくメシの食えるところを探してどこへでも動きます。
一頃は南米のブエノスアイレスに行っても、
南アのヨハネスブルグに行っても、
台湾の人で溢れていました。
若い人たちはアメリカに留学に行って
そのままアメリカに居残るために
ほとんどが電子工学の勉強をしたので、
アメリカのコンピュータ業界が
台湾人のエンジニアを首にしたら
成り立たなくなると言われるほどでした。
いま台湾は日本のあとを追って
経済的に大ピンチにおちいっていますので、
台湾の企業家も職を求める青年たちも
大陸へ大陸へと動いています。
台湾の人たちは同じ中国人だし、言葉も通ずるのだから
抵抗がなくて当り前だと思うかも知れませんが、
抵抗のあることでは日本に劣りません。
現にアメリカに向う時は同じように
言語の障害がありました。
日本人と違うところは切実感、緊張感に
大きな違いがあるということでしょう。
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