第493回
ワイシャツの在庫が1億5千万枚
9年前に、私について成都から重慶に出て、
三峡下りの船に乗った台湾の人がいます。
揚子江を下る汽船の中で、
「先生は中国の将来についてどうお考えですか」
ときかれたので、
「あなたはどんな商売をやっているのですか」
とききかえしました。
「台湾で婦人服のチェーン店を三十軒ほどやっています」
という返事だったので、
「もう台湾はそのへんにとどめて、
大陸の方に力を入れたらどうですか」
と答えました。
その人は私の言うことをまともに受けて、
上海にファッションの会社を設立して、
この8年あまりで中国全土に300軒の店をつくりました。
一頃はラサを除いて全国の大都会には
どこにも店がありますと言っていたのが、
昨年はラサにもお店ができて、
店のないところはなくなったそうです。
20才から30才まえの働く女性を対象とした婦人服を
自分たちでデザインして
上海の郊外に建てた工場で縫製していますが、
年に3回くらいファッション・ショーをひらいて、
直営店、フランチャイジイの人たちを呼んで、
予約をとります。
そこまではどこの国とも変わりはありませんが、
中国でビジネスをしていてどこが違うかというと、
人口の多いことです。
ちょっとデザインがしゃれていて、
これは売れそうだとなると、
何とコート1枚に5万5千万着も予約が入るそうです。
日本なら300着も予約があれば大喜びしますが、
14億人ともなると、桁が違ってしまいます。
スケール・メリットという点で
人口2300万の台湾では
想像もできないことが起こるんです。
このことは、
テレビや自動車の売れ行きについても言えます。
だからと言って企業の生き残る空間が
大きいと考えてはいけません。
市場が大きいだけ競争も激甚で、売れないとか、
靴の在庫が5千万足ということが起こります。
胃袋の大きい分だけ消化不良で戻す分も
大へんな量になると思わなければいけません。
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