第385回
きょうは私の77才の誕生日です

きょうはわたしの77才の誕生日です。
本当は人に知らせるようなことではないのですが
「私は77才で死にたい」という本も書いていますし、
「死に方、辞め方、別れ方」という本も書いていますので、
私の人生は今日で一巻の終わりなのです。

毎年、誕生日にはごく親しい友人と
私の世話になったと向こうが思っている人と、
うちの家族だけでささやかなパーティーをひらいています。
大袈裟なことは嫌いなのと、万一仕事にしくじって
誰も寄りつかなくなった時のことを考えて、
小さなフランス料理屋が
一杯になるくらいの人数でやっています。
それも1回ごとに違う店を探して
二度と同じところでやったことはありません。
そのうち行く店がなくなってしまうのではないかと
心配しましたが、次々と新しいひいきの店ができるので、
この調子ならまだ当分、生きていても大丈夫そうです。

でもこの年まで生きると、
生きることにあきが来てしまいます。
それを退屈しないように、
目を輝かして生きなければならないのですから、
好奇心の働く対象を探すだけでも大へんですよね。

いつも来てくれる人の中では、
諸井薫さん、嵐山光三郎さん、もず昌平さん、
長野県知事になってしまった田中康夫さん、
朱建栄さんが欠席で、沢木耕太郎さん、林真理子夫妻、
糸井重里さん、小倉エージさん、山口文憲さんのほかに、
ことしは新進気鋭の末永徹君と
歌人の田中章義君が加わります。
みんなワインや料理がうまいまずいの話ばっかりで、
天下国家を憂える話にまでは届きません。

もうこれで終着駅に到着してしまったのですから、
あとは「字余りの人生」を折り返し運転で
お茶を濁すよりほかありません。
8本あった連載も、中央公論の「口奢りて久し」と
ほんとうの時代の「知的金銭生活」を残して
みな完結させてしまいました。
でも、どうしても下りさせてくれない雑誌が
いくつかあって、
明日からまた「百里を行く者は九十九里を半ばとす」
の心境が続くことになりそうです。


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2001年3月30日(金)

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