第238回
台湾人に見捨てられた中華料理

話は元へ戻りますが、
日本文化を代表する日本料理は
この20年くらいの間に世界中に普及しましたが、
日本人の食べる物は逆に日本料理から
大きくかけ離れてしまいました。
私は40年前に日本人が日本料理離れをするのを見て、
『婦人公論』誌に
「日本料理は滅亡する」という1文を書きましたが、
いまではフランス料理やイタリア料理と、
料亭の日本料理とどちらが日本人の食べ物なのか、
わからなくなってしまいました。

料亭で出すような日本料理は値段も高すぎますが、
値段に比べておいしいとも言えません。
ですから、居酒屋とか焼鳥屋とかソバ屋くらいしか
一般の日本人の行く和風の店はなくなってしまいました。
日本人が時代離れをした日本料理を
見捨ててしまったのです。

似たようなことが台湾でも起っています。
台湾の若い男女が
中華料理屋に行かなくなってしまったのです。
台湾には昔ながらの台湾料理屋もありますが、
蒋介石の都落ちと共に中国じゅうの地方料理が
台湾に持ち込まれたので、
台北にはほとんどの中国料理があるようになりました。
私が台湾政府と妥協して
台湾に帰るようになった29年前には
台北は文字通り中華料理の殿堂でした。

ところが、あれから30年近くたって見ると、
台北の有名な中華料理屋は
ほとんど姿を消してしまいました。
中華料理として残っているのは
高価で故郷のわからなくなってしまった
ホテルの中華料理と、
店の雰囲気は西洋風にアレンジされ、
料理は決してうまいとは言えないような
ムードを楽しむ中華風のレストランに
二分されてしまったのです。

その中にアメリカ風のエスニック料理や
スパゲッティーやピザパイを食べさせる
イタリア料理が割り込んで
結構、繁盛するようになったので、
もしかして中華料理は滅亡してしまうんじゃないかと
私のような中華党はおそれおののいています。
少なくとも若い日本人が
日本料理屋に行かなくなったように、
若い台湾人も中華料理屋に行かなくなりましたね。


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