第235回
手に職もてば海外で生きて行けます
ラーメンで思い出しましたが、
いま台湾では日本風のラーメンが
空前のブームになっています。
20年も前に私に海外で仕事がしたいと
相談に見えた青年がいました。
何がしたいのかときいたら、
卒業以来ずっと商社で働いてきたから、
独立して貿易の仕事でもしようかと思っています
という返事でした。
私は小さな貿易商をやって成功している人は、
身内の者が工場をひらいていて、
その材料の仕入れか、製品の輸出を一手に引き受けていて
確実に仕事のある人に限られているから
どちらの当てもないならやめた方がいいだろうと
アドバイスをしました。
じゃあ何をすればよろしいでしょうかときくから、
親は何をやっているんですかときいたら、
父親はサラリーマンだけど、
母親はかなり大きな美容院をひらいていますと言う。
じゃあいまからお母さんについて
美容師としての腕を磨くことができますかと
ききかえしたら、しばらく考えた末に
「できないことはありません」
と答えました。
手に職を持っておれば海外に行っても
何とかメシにありつけます。
ヘア・カットからパーマまで
一通りやれるようになったらまたいらっしゃい、
必要なら店をつくる手伝いもしてあげますと言ったら、
1年あまりして本当に私のところへまた姿を現しました。
私は台湾でファッションの商売を
手広くやっている友人に紹介し、
合弁で台湾のメインストリートに
台湾屈指のビューティー・サロンをひらかせました。
まだ立派な美容院のない時代でしたから、
一時は台北の美容界で一せいを風靡するほど繁盛し、
店も3軒になりましたが、
もともと好きでなった美容師でありませんから、
アキが来たのでしょう。
台湾に住むようになって
台湾の女性と結婚したこともありますが、
美容室を人に譲ると、デパートの中に喫茶店をひらいたり、
友達と協力で焼鳥屋をはじめたりしましたが、
最終的には九州に戻って
博多ラーメンの店でスープをつくる秘訣を伝授してもらい、
いまでは台北で1,2を争う
人気ラーメン店になっています。
たまに私ものぞきに行くことがありますが、
どうしてもお金を受けとってくれません。
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