第169回
「哲学が変わった」を読んで下さい

私がVOICEという雑誌に1年半にわたって連載してきた
「幸せな日本人」が単行本になって
PHP研究所から出版されることになりました。
単行本にするに際して
「哲学が変わった」
サブタイトル〜物離れ・金離れ・日本人離れ〜
と変更しました。

「哲学が変わった」というと、
難しそうにきこえるかも知れませんが、
豊かさを追求するだけが人生でないと考える人が
ふえたということです。
戦争が終ったばかりの頃はまだみんな貧乏だったので、
大抵の人がお金持ちになりたいと思っていました。
昭和30年代に入ると、工業化が軌道に乗りはじめ、
ストや賃上げ闘争が年中行事化して、
国民所得も年々上昇するようになりました。

物質に恵まれるようになり、
もっといい生活ができる可能性が出てくると、
「せめてヨーロッパ並みの賃金を」と願っていたのが
アメリカをしのぐようになり、
日本人はバブルに向って
まっしぐらに突っ走るようになりました。
その挙句の果てがバブルの崩壊、
戦後かつて経験したことのない大不況、
そして成熟社会への移行です。

バブルの崩壊で、産業界も銀行や保険会社も
大きな損害を蒙りましたが、
個人で銀行から借金をして億ションと呼ばれる
高価なマンションを買った人もえらい目にあいました。
景気が悪くなって物が売れなくなると、
産業界でもリストラがはじまり、
失業者もたくさん出るようになりました。
でもそんなことで意気消沈していることはありません。
不景気になったといっても、
大部分の日本人の生活レベルが
下がったわけではありません。

一番大きな収穫は物質的な富の追求をやっても
人生の幸せにつながるものでないということに
日本人が気づいたことです。
「哲学が変わった」とは
人々が「足るを知る」ようになったということです。
もっと金持ちになりたいと考えるよりも、
もっと充実した生活をしたいと考える方が
まともでしょう。
たった10年で気づくなんて
とても素晴らしいことだと思いませんか。    


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