第164回
アマゾンがうまく行かなかったわけ
私はインターネットは情報を伝達する手段であって、
物を売る場所ではないと思っています。
もちろん、どんな物をどんな値段で
売っているという情報を提供すれば、
それによって買いたいという人が現われるでしょう。
しかし、人によって好みの違う商品とか、
実際に手にとって見るか、
身体につけて見ないと買う気を起させない商品は
いくらインターネットで宣伝しても、
人々に購買意欲を起させるには至らないと思います。
ファッション商品もその一つですが、
本などもそうした性質の商品でしょう。
アマゾンがインターネットで本を売りはじめて、
本の流通経路が一変するだろうと
ハヤされたことがあります。
利益も出ていないのに、
株価ばかり先走りして話題になりました。
でも私はインターネットで本が売れるという見方に
同調できませんでした。
私は本読みですから、本はたくさん買いますが、
中身をパラパラとめくってみないで
表紙だけ見て買うことはありません。
本を読む人は誰でもそうだと思います。
もしアマゾンにお客があるとすれば、
それは多分、いままで本を読まなかった人か、
でなければ本を読まなくとも
平気で生きて行ける人にきまっています。
私がそう言っても、私に反対した
インターネットの信奉者たちが結構おりました。
何年やっても赤字から抜け切れなかったアマゾンは
焦って他の商品の販売にも手を出しました。
ということは本を売っただけでは
予想した成果があがらないことに
気づいたということでしょう。
とうとうアマゾンは株価が大暴落するという
現実に直面してしまいました。
ただでさえ斜陽化の著しい出版業界で
いくら流通の新しい経路が試みられても、
斜陽化に歯止めがきかないことがわかります。
インターネットでバーチャル商店街をつくるという話も
新規加入がふえた分だけ
閉店する商店もふえる可能性があります。
新しい乗物が珍しいからと言って、
猫も杓子も乗せられるわけではありません。
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