第49回
かみさんが私に相談料払ったわけ

人の相談にのるのはとても面白いし、
とても勉強になります。
でもとても疲れることも確かですね。

最初の頃、私は1時間1万円の相談料をもらいましたが、
本当のことをいうと、私にとっては
割りに合わない仕事でした。
原稿用紙に向ったり、講演に行った方が
ずっと収入がありましたから。
でも相談をしただけで
お金を払う習慣のなかった時代でしたから、
払う側にして見れば安い料金ではありません。

それを承知で来たのですから、
お金をちゃんと払ってくれます。
でも払っただけの分はちゃんと相談に
のってもらわなくちゃという気持がありますから、
相談に見えた人は前の晩から
明日きくことをちゃんと便箋紙に何枚も書き綴って、
私の部屋に入って来る時から目の色が違います。

そういう人を相手に土曜日も日曜日もつぶして、
朝から夕方まで6人も7人も
ぶっつづけに相談にのっていると、
口もきけないほどへとへとになります。
家に帰って夕食のテーブルに向うと、
こちらは口をきくのも億劫ですから
家内から話しかけられても、ろくに口もききません。

すると、家内が何と思ったか、
つかつかと自分の部屋に行って、
1万円札を持ってきて私の目の前におきました。
「あなた、人が1万円払ったら、1時間、
話の相手をするのでしょう。
私も1万円払うから、さあ、
これから私のお相手をしてちょうだい」
これにはまいってしまいました。

1万円の相談料はその後、3万円に値上げしましたが
3万円でも引き合わないことは同じです。
その頃の私は1回講演をすると、
50万円もお金をもらうようになっていましたから
3万円もらっても嬉しいと思う人のところへ来る人は
そんなに多くないと思いますが、
3万円もらっても嬉しくない人のところへは
押すな押すなの人ですから、
どっちにしても成り立ちにくい商売ですね。


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