第15回
株は推理小説を読む要領で

はじめて馬券を買って大当りをしたら、
競馬がやめられなくなってしまいます。
反対にみすみすお金を
どぶに捨てるようなことになったら、
競馬とは縁がなくなってしまいます。

もう半世紀近くも前のことですが、
香港からビジネスのことで東京旅行に来た私は
当時流行しはじめたばかりの
パチンコ屋にとびこんだことがあります。
50円分の玉を買ってはじいたら、
みんな使いはたす前にジャラジャラと玉が出て来て
何とピース2箱に換えることができました。
それに味を占めて、次に100円分買ったら、
あッという間に消えてなくなってしまいました。

私は100円スったことよりも、
勝負に負けたことがくやしくて、
それ以来、パチンコ台の前に立ったことがありません。
パチンコには指相みたいなものがあって、
指相のよい人はパチンコ運に恵まれ、
ジャラジャラといくらでも玉が出てきて
それだけでもメシが食えるそうですが、
パチンコ店の店員と組んで不正を働く
プロの話が時々、新聞に出ているところを見ると、
パチンコは知的ゲームというよりも
知能犯の舞台になるゲームなんでしょうね。

それに比べると、株式投資には
不特定要素がたくさんあって、
予想通りにはなかなか動いてくれませんが、
そういううっかりして見逃す与件も含めて、
その変化をキャッチできるものですから、
推理小説を読んでいるようなものです。
全部まだ読んでしまわなくとも、
感性の鋭い人なら事件がどう展開して
犯人が誰であるかわかってしまいます。

ところが、偶然に買った株でも、
また人に教えられた株でも、
運がよいだけでもお金が儲かってしまいます。
何回かそういう目にあうと、
人は自分の推理能力と運を混同してしまうんですね。
「運も才能のうち」といいますが、
運だけで財産管理はできません。
やはり能力が必要ですが、それは授業料を払い、
失敗をくりかえしながら実地に覚えるものです。





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