17. 「知恵」は借り物でも「知恵」である
「頭のよさ」と「運のよさ」
新しい商売に乗り出して、短期間に成功した人を見ていると、いくつか共通した特徴のあることに気づく。
まず第一は、なかなかよく考えているなあ、ということである。頭がいい人である、といいなおしてもよい。
この世の中、頭のよい人でないと成功しない、とすれば、生まれつき鈍な人は、とうてい見込みがないことになる。事実、その通りで、頭の回転の悪い人は頭の回転のよい人に使われるめぐりあわせになることが多い。
昔も今も、人は「力」を問題にし、「力」のある者にはかなわないという。その場合の「力」とは、人によって受けとり方が違うが、「力」の中には「腕力」もあれば、「武力」も「資本力」もある。また「体力」もあれば「魅力」も「政治力」もある。これらの「力」のもっとも原始的な形は、おそらく「腕力」であろう。腕っぷしの強い者が弱い者を制することは充分、考えられることであるが、封建時代の御前試合などを見てもわかるように、腕っぷしの強い者は試合をさせられるほうであって、試合をせよといって命令をするほうではない。命令をするほうは、腕っぷしは弱くても、腕っぷしの強い連中を制御する「智力」を持った人間であって、そういう連中が天下を制するのである。だから「武力」「経済力」「政治力」などのあらゆる「力」の背後にあるのが「智力」であって、「力」のある者で「知恵」を持たない者はまず一人もいない。社長になるほどの人物はいずれも何らかの意味で、「智力」のある人に属するといってよい。
ただし、一口に頭がよいといっても、頭のよさにはいろんな種類のものがある。たとえば、知恵の中には、お金になる知恵もあれば、お金にならない知恵もある。また人に重宝がられる知恵もあれば、人を欺く知恵もある。したがって、人から尊敬されるような知恵の持主だからといって、人の上に立てるとは限らず、また大金持になれるとは限らない。つまり、頭がよければ事業に必ず成功するというわけには行かないが、頭のよいことが事業を成功させる条件の一つであることには変わりはないのである。
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