| 1. 商売はピンチの時期です 悪いことばかりは続かない
 人生のどこかの時点で、
 「自分はもしかしたら職業の選び方を間違えたのではないか」
 と思うことが時々、おこる。たいていは、人生の曲がり角に立った時であり、何をやってもうまく行かなかったり、思わぬ損失を招いたり、もめ事にまきこまれたりする時である。
 そういう時は、気も焦るが、焦って考えることがどれもこれもうまく行かない。そこでますます、落ち込んで、俺は駄目なんじゃないか、と自信を失ってしまう。ところが、人間のそうした気持にかかわりなく、時間は容赦なく過ぎて行く。
 あとになってふりかえってみると、
 「あの時は、俺の運の悪い時だったんだな、運の悪い時はいくらジタバタしても駄目で、ジッとこらえて待つよりほかないんだな」
 と気がつくようになる。つまり、経済界に好景気と不景気があるように、人生にも運不運のサイクルがあって、そのたびに一喜一憂するが、人生はそんなに悪いことばかり続くものではないということがわかってくるのである。
 もっとも私がそういったからといって、私自身、何もしないでノンキに構えているとか、人生をまったく達観しているというわけではない。落ち込みがあると、人は落ち込みから這い上がろうと努力するし、次に落ち込みがないようにと、それに備えるようになる。しかし、どんなに努力しても、サイクルをまったく克服してしまうことはできない。精々のところ、抵抗力を身につけることと、不運とはどういうものであるか、自分にいいきかせて、上手に切り抜けて行けるようになれるだけのことである。またそういう時に、どういう努力をしたかということによって、次の道の開け方が違ってくることがわかるから、人より少しばかり老練になってくるというだけのことなのである。
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