個人消費についてもほぼ同じことがいえる。個人消費の減少のなかには、欲しい物がなくなったから買わなくなった物と、先行きが不安なために買うのを控えた物と二つに分けられる。物が溢れるようになって買う気を起さなかった分については、お金の使い方が変っただけで消費しなくなったわけではないから、社会の変化に応じた企業の対応が必要であろう。世の中の変化に遅れをとったために業績不振におちいった企業が倒産したとしても、それはやむをえないことであろう。
それに対して、先行き不安で生じた消費不足は、不安が取り除かれれば、しぜんに回復するものである。そうした不安を取り除くのが政府の仕事であり、これから政府が全力を挙げて取り組むべき緊急課題である。
では、どうしたら国民の前途に対する不安を取り除くことができるのだろうか。銀行がいつ潰れるかわからないという崖っぷちに立っているときは、銀行が不渡りを出さないように下支えをすることが焦眉の急であるが、不良銀行を整理するにしても、銀行の債権債務を政府の機関か他の銀行が引き継ぐことが前提である。そのくらいの実力を日本経済はもっているのだから、ひとまず債権債務を政府が引き受け、同時に不良債権をできるだけ軽減する措置を講ずるべきであろう。
そのために最も即効性があるのは地価と株価を上げることである。バブルのときは地価は安いほうがよいという妄想に駆られて、ジャーナリズムが先頭に立って地価上昇の退治にかかったが、結果は目もあてられないことになってしまった。
地価というものは上がりすぎても困るが、下がりすぎるのはもっと困る。マンションをローンで買った人にしてみても、買った値段より時価が下がっておれば、毎月のローンを支払うのも苦痛になる。反対に買ったときより少しずつでも値上がりをしていて、自分の財産もかなり増えたな、この調子で定年までに借金も完済してしまえばあとは悠々自適の生活ができるな、という夢をもつことができれば、財布の紐も少しはゆるむものである。
また株にしても、個人で借金までして株を買う人は少ないだろうが、買った株が買値を割るようなことが起れば、とたんに気が重くなる。お金をもってデパートに行っても、買いたい物も買わないで帰ってくる。人間の心理として景気をいちばん敏感に反映するのは地価と株価であり、また景気にいちばん敏感にはねかえるのも地価と株価である。
だからバブルがはじけて以来、私は台湾に帰って李登輝さんに会うたびに日本の二の舞いにならないように「地価と株価が下がらないように最善の対策をとってください」とアドバイスをしてきた。李登輝さんもそのへんはよく心得ているから、中国大陸からミサイルで威嚇されて台湾の株価が大暴落をしたときも、政府資金を総動員して暴落する株に買い向った。アジア中が通貨不安で戦々恐々としている昨今、ひとり台湾だけが比較的安泰でおられるのは対外債務が少ないこともあるが、地価と株価がかなりの水準に落ち着いていることと深い関係がある。
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