いまのところ、アメリカにはまだ景気後退の兆候ははっきり現われていないが、対アジア輸出が減少し、逆に輸入だけたいへんな勢いで増えはじめると、ドルだけが一方的に高値を維持することは不可能になるだろう。そのうえ、貸したお金がひっかかり、アジア株に投資したファンドが軒並み値下がりをするとなると、ドル安が株安に連動することになる。ただでさえ貿易赤字が定着してしまったアメリカで貿易赤字が年に五割も倍も増えるようになったら、ドル買いに徹してきた投機筋だって黙って見逃すようなことはないだろう。
アメリカは二十数年前、貿易赤字国に切りかわる時点でアメリカでつくったのではソロバンに乗らなくなった業種は海外に移すようになった。そして、それらの企業に資金を提供したり、技術を提供したりするのがアメリカの仕事になった。投資の対象になった企業にはアメリカの企業が自己資金をもって現地に乗り込んで生産に従事しているものもあれば、現地企業に金融をしたり、あるいは、株式市場を通して株に投資しているものもある。前者は腰を据えて事業を軌道に乗せて利益を生み出す以外に資金を回収する方法はないが、後者は形勢悪しと見れば、貸しているお金を引き揚げたり、株を叩き売ってお金を回収することができる。
アジアの国々では、中国と台湾だけが前者を選び、他の国々は後者を選んだ。台湾はずいぶん前から外貨準備高の豊冨なところだから、海外からの投資に対して厳しい条件をつけなくなっているが、中国では資本として投じられたお金は会社を解散しないかぎり持って帰れない仕組みになっている。そうした合弁企業が海外や外国銀行から融資を受けることに対しても厳しい制限がある。
また外国人に開放されているのは、ドルで売買ができる上海のB株と、香港ドルで売買できる深のB株と香港のH株だけで、あとは外国人の売買を禁じている。開放政策以来、中国が外国から受け入れた資金は、資本金で二千億ドル、借入金で千二百億ドルという巨額にのぼっているが、幸か不幸か、そのほとんどが恣意的に引き揚げることのできない資金なのである。
いまにして思うと、アジアの国々で外国企業が国内市場を席巻するのを恐れるあまり、長期資金の投資を制限し、短期資金の流入に道を開いたことが間違いのもとだった。設備投資の段階では気がつかないことだったが、資金と技術を兼ね備えた世界的スケールの企業なら、品質でも価格でも国際競争ができるから、国内市場が萎縮しても閉鎖に追い込まれないですむ。そういうことをいっさい考慮に入れず、世界を股に暴れまわる投機資金をイージーに受け入れたために国がひっくりかえらんばかりの大騒ぎになってしまったのである。お金ならどんなお金でも、生産資本になると思うのは間違いで、お金がどんな性質のものであるかを見分けることが先決だったことがわかる。
そうはいっても賽はすでに投げられてしまった。倒産する会社は倒産するよりほかないし、整理統合されたり、外国資本に買収される企業はそうなるよりほかない。しかし、これで人類の営みが終るわけではないから、どこに間違いがあったかをよく検討して、瓦礫のなかからもう一度、出直すよりほかないだろう。
←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ