第91回
自分でお金をつくった人は、独自の金銭哲学、流儀を持っている
ひと口に「金持ち」と言っても、いろいろな人がいます。
大都市周辺の地主さんは、何もしないでお金持ちになった果報者です。
こういうお金持ちもたしかにお金は持っているでしょうが、
自分で儲けたお金ではないから、人間としての迫力がありません。
これに対して自分でお金をつくった人は、
自分なりの哲学も持っているし、自分流の人生観も持っています。
お金や時間の使い方を見ても、なるほどと頷けるやり方をします。
たとえば、是川銀蔵さんなら是川さん流の流儀があるわけです。
最後の最後まで、自分の考え方に固執して、
それをとおそうとする。それが成功へと結びつく。
ものごとに固執する人はたくさんいますが、
固執している対象が「成功」という方向へ向いていなければ、
けっして成功はしない。
世界の歴史をふりかえって見ると、常識的な人が考え、
行動したことで歴史に残っているものは、一つもありません。
万里の長城をつくった秦の始皇帝も、
インドの寺院タージ・マハールをつくったムガール帝国のシャー・ジャハン帝も、
非常識の塊りというよりほかありません。
死んだ自分の妾のためにそれをつくり、
もうーつ黒い寺院をつくろうとしたところ、
自分の息子に「そんなことをしていると国がつぶれる」と言われ、
ついに捕えられて幽閉されたそうです。
しかし、いまではインドの観光の一つとして立派に国のために役立っているのです。
ピラミッドもそうです。
ベルサイユ宮殿もそうだし、数えあげればきりがありません。
どれもこれも、非常識の所産といえます。
それに比べると、いまの日本人は人の発明したものをとり入れてきて、
売れる物を考え、つくり、売ろうといった発想しかありません。
もちろん、それで成功した人はたくさんいますが、
よその国に行くとまたべつの発想をします。
たとえば香港のお金持ちといわれる連中は、
大きなビルの中の事務所にどっかと座っている。
アメリカと香港とのあいだで、ココアはいくらで取引されているかとか、
金や円はいくらであるかといった相場のことだけ研究している。
ドルと円のレートを過去にさかのぼって調査をし、
二百二十円までさがってきたら、円を売ってドルを買う、
すると、また円が安くなるから、一億ドルぶん円に替れば、
二十億儲かった、三十億円になったと喜んでいる。
香港では、香港の人が外国で稼いだお金に対しては、
一銭も税金をかけないという規定があるから、
いくら稼いでも税金はとられない。
じゃ、稼いだお金をパッパと使うかというと、
それをまた貯め込んでつぎの投資にまわしている。 |