第80回
たとえ夫婦・親子のあいだでも、金銭面のけじめははっきりさせる
人に貸したお金は、返してもらわないといつまでもおぼえているものです。
反対に、人から借りたお金のことはすぐに忘れてしまう人がいます。
人間は自分に都合の悪いことは忘れたがるし、また忘れてしまうのです。
ですから、人に信用されるためには、人に借りたお金のことは忘れずに返し、
人に貸したお金のことは忘れるくらいでちょうどよいのです。
いつまでも人に助けられたことに恩義を感ずるような人は、
人間関係もスムーズに行くし、出世のチャンスをつかむことも多いと思います。
反対に人間関係は、金銭問題からこじれることがいちばん多い。
たとえ恋人同士でも、何かの都合でお金が必要になって、
一方が他方から借りたりすると、
二人のあいだにお金が割り込んできて、壁になる可能性がたいへん強いんです。
また、いくら好きでも相手がお金にだらしがないと、
「この人とは一緒になれない」という気持になるものです。
これは、夫婦のあいだでも同じことです。
一緒になってからできた財産は、
たとえ名義がどちらか一方になっていても、
夫婦の共有財産です。
それが共有財産でありつづけるためには、
二人の気持がぴったりとかみ合っていないとむずかしい面があります。
離婚の問題が持ちあがってくると、
とたんに、財産に対するお互いの思惑がいかに行き違っているか、
表面化してきます。
だから、仲よくなるまえから、これは僕の財産、あれは君の財産と、
はっきり分けておいたほうがいいと、
アメリカの離婚のハウツー・ブックでは教えています。
しかし、これから結婚をして共同生活をしようとしている人に、
離婚を考慮に入れた財産対策をやれと言っても無理ですね。
私は、妻と一緒になっ てからできた財産は、
私の働きが七で、妻の働きは三と思っています。
もし大喧嘩になったら、そういう分け方をします。
でも、離婚をしたら、女のほうが不利だから、大負けに負けて、
半々にしてもよいと、つねづね、女房に冗談を言っています。
半分あれば安心と思うのか、いまのところ、別れ話にならないですんでいます。
でも、ふだんから、夫婦や親子のあいだでも、
お金のことをきちんとしておけば、トラブルは少なくなります。
とにかくお金に関しては、
自分が被害者になっていやだなと思うことを
他人にしてはいけない、これに尽きます。
孔子の言葉にもあるように、
「自分がいやだと思うことは、相手に対してもやらない」ことです。
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