第313回
スターリンは今も英雄か?
欧州には、人の名前がついたよく通りがあります。
米国で成功したデンマーク人が、コペンハーゲン市に、
「寄付をするから通りの名前を変えて欲しい」
と申し出たことがありました。
年をとった億万長者は、何億円だったか、多額の寄付をするから
「通りに自分の名前を付けて欲しい」
と、言うのでした。
有り余るお金で、
子供の頃育った通りに自分の名前を残したかったのです。
住人の反対で、この提案は実現しませんでした。
昔、初めてパリの地下鉄に乗って
「あれ?」と、気が付いたことがありました。
駅の名前に「スターリングラド」とか
「フランクリン・ルーズベルト」とかいった
外国の元元首の名が付いているのです。
第二次世界大戦の名残が、
今もくっきりと地下鉄の壁にはめ込まれているのでした。
そのまま忘れていましたが、先日パリに行ってみて
”そういえばそうだった”と、思い出しました。
先の戦争でフランスを救ったのは、
この二人に率いられた国々でした。
当時の、嬉しさと胸に溢れる感謝の気持ちが、
駅名にこめられているのに気づきました。
そのスターリンの名を冠した地下鉄の駅のプラットホームに、
中年の東欧女性らしき一行がいました。
地下鉄といっても、その車線は地上に出ていて、
8月の眩しい光の下で、彼女達は無邪気な笑い声をたてていました。
見ていると、彼女達は駅名の札を背景に、
嬉しそうに互いに記念写真を撮り始めました。
きっとロシアからやってきた人々だったのでしょう。
プーチンはバルト三国を苦しめたことについて謝罪を求められて
「では、ナチの支配下に置かれていた方が良かったというのか?」
と、反論しました。
彼等のソ連軍が、
ヒットラーの軍隊の大半を引き受けて戦ったことを、
今でも誇りに思っていることだけは分りました。
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