前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第205回
店は2軒に1軒は潰れる

去年の冬、私と妻は偶然マーグレットに出合いました。
プレイグランド(学童保育園)の子供の頃から知っている子です。
デンマーク流に抱きついて再開を喜んでから、
色々な話をしました。
そのうち、私の一軒の店の話になって
「もうそろそろ手放す予定」と聞くと、
マーグレットはその店が欲しい、と言いだしました。
店を探していたマーグレットには渡りに船で、
繁華街からも近い、
交差点の角のその店を受けつぐことになりました。
もともと小さい店なので家賃は高くはないですが、
相場よりももっと安くしました。
統計によると、コペンハーゲンでは、
新しくオープンした店の半分以上が1年以内に店をたたむ、
という現実があります。
しかしこの家賃なら、どうなっても赤字ということはないでしょう。
マーグレットが
「無書類結婚(次回解説します)」をしている相手の給料で、
とりあえず店の収入がゼロでも大丈夫です。

マーグレットは写真屋の終る何ヶ月も前から、
店の奥の部屋にミシンや生地を持ち込みました。
店を受け取るまでには時間が有るので子供服を作り貯めるのです。
家に帰ると狭い2部屋のアパートに、
活発な男の子が二人もいて仕事がはかどらないそうです。
そして、今年の1月の半ばに店を受け取ると、
パート仕事と家事の合間とを見つけて、店の大改造を始めました。
手伝えたのは力持ちの妹だけで、ほとんど2人でやりました。
壁紙をはがし、壁の凸凹を直し、ペンキを塗りました。
店の絨毯とその下のリノリウムを剥がすと、
あちこち破損した石の床がでてきました。
2人は本格的に横木を渡して、厚い無垢の床材を張りました。
備品を買い揃え、自分の作る物だけでは追いつかないので、
子供服の完成品を仕入れました。
デンマークの建物は、時間とやる気があって不器用でさえなければ、
誰でも専門家と変わらない仕事ができるところがいいです。
家を建てるのには、もう少しの力と人数が有れば出来ます。
電気工事だけは素人がやってはいけないので、
友人の専門家にやってもらいました。
最後の日も2人だけで、顔が真っ赤に成る程夢中になって、
朝の3時まで働いて仕上げをしました。
私の古い店は、見違えるような綺麗な店に生まれ変わりました。


こうして、カンボジア人のチュン達の寿司屋と前後して、
マーグレットは子供服屋を開店しました。
開店から2ヶ月になりますが、今のところ、
もう自分の給料が取れるくらいに好調だそうで、楽しそうです。


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2005年4月28日(木)

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